研究期間内に次の成果を得ました。
- 科学教育プログラムの開発
- 長崎県内の漁業協同組合の協力の下、子どもたちの手によるワカメの種付け・育成・収穫及びワカメから抽出したクロロフィルcを用いた色素増感太陽電池の作製という、一連の科学教育プログラムを開発しました。
- 福島県内の農家の協力の下、子どもたちの手によるブルーベリーの収穫及びブルーベリーから抽出したアントシアニン色素を用いた色素増感太陽電池の作製という、一連の科学教育プログラムを開発しました。
- 先行研究例1)を参考に、子どもたちの自然の恵みの恩恵、科学技術への興味関心及び科学技術の社会的価値についての意義やその信頼性を測定する質問項目を開発しました。
- 子どもたちの居住する地域に対する想いを測定する質問項目について、開発の足がかりを得ました。
- この科学教育プログラムの実施により、次のことが明らかになりました。
- 児童の多くは海や川で遊びたいと感じており、科学者や技術者は私たちの生活を良くしようとして研究していると思っていることが分かりました。また、相関分析の結果から、理科を好きな児童ほど自然を大切にするために自分にできることがあると答えており、科学技術が自分の生活に役立っていると思っていることがわかりました。(成果発表 論文1)
- 長崎県での科学教育プログラムの実施からは、実施後に児童の自然(海)への興味関心及び科学技術への興味関心が高まることがわかりました。また、自然と科学技術との関係性について意識が高まること及び科学技術への肯定的なイメージが高まることがわかりました。(成果発表 学会発表1)
- 福島県での科学教育プログラムの実施からは、実施後に児童の自然(山、川)への興味関心は長崎県の児童ほどは高まらなかったが、自然に対する肯定的なイメージは長崎県の児童より高くなることがわかりました。また、科学技術への興味関心及び自然と科学技術との関係性については、長崎県の児童と同様に向上が見られることがわかりました。
- 科学に対する信頼性については、長崎県、福島県の児童ともにプログラム実施前後で有意な意識の高まりは認められませんでした。
- 自然に対するイメージ(「よく見える、役に立つ」)では、プログラム実施前後での肯定的なイメージへの上昇率は福島県の児童のほうが長崎県の児童より高くなることがわかりました。
- 科学技術に対するイメージでは、プログラム実施前後で両県の児童ともに肯定的なイメージに上昇していることがわかりました。
- まとめ
本研究により開発した科学教育プログラムは、子どもの自然及び科学技術への興味関心、自然と科学技術との関係性に対する意識を高める効果があると言えます。また、自然や科学技術に対する肯定的なイメージを高める効果があることが示唆されます。一方、科学技術への信頼性の回復に対する効果はさほど認められなかったことから、この点に関するプログラムの改善の必要性があると言えます。
参考文献
1)a)川本思心・中山実・西條美紀,科学技術リテラシーをどうとらえるか~リテラシークラスタ別教育プログラム提案のための質問紙調査~、科学技術コミュニケーション第3号、pp.40-60(2008);
b)竹本裕之、キャンプにおける風を題材とした科学教育プログラムの成果、国立オリンピック記念青少年総合センター研究紀要第4号、pp.67-75(2004).